椅子の上

 自身が対応していた千代田区のお客さんプロジェクト。これが全社的なトラブルに発展し、副社長クラスの耳に入る事態。自分がプロジェクトマネージャをやってきた中では間違いなく1番の炎上プロジェクトだ。
 原因はベンダの開発品質が悪くて、試験と改修が終わらないことにある。他にも細かな失敗はあるものの、プログラム製造が上手くいっていなければ何も始まらない。毎日24時過ぎまでの対応が続くし、俺だけじゃなくて何段も上の管理者たちまで直接対応し始めてくれている。
 身体的にも精神的にも辛いことは多いが、不思議な気分にもなってくる。これだけ炎上しようが何しようが、今俺がいるのは自宅で、自室の椅子の上なのだ。会議漬け、作業漬けなのは間違いないが、苦労して汗をかいたり、悲しくなったり、そんな表情の他人を見ることが無い。この椅子の上で、WEB会議越しに伝わってくる音声が物事を左右している。
 自分の中にある責任感と、目の前にある空虚さが、どうもギャップすごすぎて何も実感わかなくなってくる。ある意味で、それが精神安定剤になっている。今はリカバリ策を考え、エスカレーションし、現場を水際で食い止める。これの繰り返し。なんだかそれが日課のように、ちょっと苦しくも楽しい出来事のように思えてきてしまった。俺は心が崩壊するタイプじゃないらしい、逆にハイになっている。
 夜に夕飯を食べようと野菜を切ったら2晩連続で誤って手を切った。一方で確実に身体はこわれてきている。だがしかし、ふんばりどき。終わったら何しようか。それを考えるのも今は楽しみの1つ。