浜通り旅行

高台から眺める広野町の海


 酪農カフェオレ*1を見れば、福島県を思い出す。
 今日は、休みを取って東北時代の同僚N.K.と2人、福島県浜通りを旅することにした。
 今回の目的は2つ。1つは、2人が東北時代に関わっていた最後の案件「屋外LEDサイネージ」が完成(納品)をするということで、現物を見に行くこと。2015年2月にメーカー倉庫で初めて実機を見て以来*2、足掛け丸2年をかけた案件となった。もう1つは、それに合わせて昨年6月末に離れて以来の浜通りを見学してくることだった。

 まずはじめは、楢葉町の天神岬。双葉郡の被災を俯瞰的に見る象徴的な場所だけに何度も通っている。以前に比べ、少しずつ区画が整理されつつあるし、除染廃棄物も整理され、壁が作られていた。
 その後、楢葉町のお客さん先にもお邪魔し、1時間程度話をさせてもらった。新たな住宅街の話や、学校の再開の話を教えて貰えた。中には帰町する・しないでドロドロしたいざこざがあった話なんかも。形式張った、表だけの話じゃない。今々悩んでいることを素直に教えていただき、このお客さんにとって内側(味方)の人間になれたのだと改めて感じた。最後に「また、いつでも来てください。」と言われたのが本当に嬉しく、印象に残っている。

浪江に新交流拠点 「まち・なみ・まるしぇ」オープン | 東日本大震災 | 福島民報
キッチン・グランマ - 浪江/定食・食堂 [食べログ]
 その後は北上し、国道6号線沿いを眺めながら浪江町へ。昨年10月にオープンした仮設商店街「まち・なみ・まるしぇ」にある定食屋「キッチン・グランマ」にて昼メシ。メニューは焼き魚定食750円。

浪江町内の上水道の開栓をいたします等 | 浪江町ホームページ
 店の入口には「当店では米をミネラルウォーターで研ぎ炊いています」との記載。町は安全性を示しているが、やはり一般消費者にはまだ印象的にハードルが高いのだろうか。役場ホームページには下記のような記載があるのだが。

浪江町上水道の現状と安全性について
浪江町内の上水道は町内にある4か所の井戸を水源としております。現在も震災前と同様です。(大柿ダムの水は使用しておりません。)
◆給水エリア内の水道管の約79%が復旧済みです。(津波被災区域除く)
◆復旧開始の約3年前から継続して放射性物質のモニタリングをしておりますが、全て検出限界値(1㏃/kg)以下です。
◆pH(水素イオン濃度)・硬度等の水質も震災前と変わりなく、飲用水に適合しております。

 街の復興とともに、少しずつこういった風評被害も無くなっていくと良いと感じた場面だった。

http://www.minyu-net.com/tourist/hama/FM20161126-130170.php
 富岡町も昨年11月に複合商業施設「さくらモールとみおか」をオープンしていた。まだ先行オープン段階で全店舗は入っていなかったが、飲食店なんかも入っていて、拠点としてこれから発展していくのだろう。
 先の浪江町の他、飯舘村、川俣町山木屋地区、そして富岡町と今月末、来月には避難指示が多くの場所で解除される。それのためか、国道6号線沿いも、以前の除染関係者より、建設関係者のほうが圧倒的に多い。復興が進むに連れ、景色も人(特に服装)も変わってきた。

 その後、広野町。最後の案件「屋外LEDサイネージ」が無事取り付いていた。何よりも嬉しいことである。ちょうど最終試験工程でSEメンバも現地入りしていて、その場で会うこともできた。まだ肌寒い浜通りの海沿い。大変頭の下がる思いだ。
 本件のお客さんにもお邪魔し、この案件の話や、街の様子なんかを教えて貰えた。この地域や、お客さんたちが果たす役割の話や、周囲の景色が変わった話。それと、実は奥さんが浦和出身なのでよく浦和にいる(明日18日もいる)話など。「ぜひ、今度浦和で飲みましょう。」とこちらから。快諾いただき、お互い笑顔でその場を後にした。
 景色も人も前に進んでいることを実感し、感動していたいわき方面への道中、町内で開花した桜を発見。7年目を迎える浜通りも、きっとサクラサク。それを確信した帰り道だった。

 最後はいわき支店に顔を出し、皆さんへご挨拶。アポなし突撃だったので本当に驚かれたが、懐かしい面々に暖かく迎え入れて貰ったのだった。
 フロアレイアウトが変わって自席にしていた机が無くなっていてやや寂しい。けど、きっとまたここでお役目を果たすこともあるだろうと、「では、また。」と行って支店を出た。
柏谷屋 (カシワヤヤ) - いわき/居酒屋 [食べログ]
 その後はいつもの居酒屋「柏谷屋」にて、いつもの大将と女将さんに迎えてもらい、いわき支店はじめ、福島県域の有志、そして師匠S.O.が歓迎会を開催してくれた。大変美味しい食事・日本酒に、大変嬉しい会話も混じって、大満足の夜だった。なんだかんだ4次会までハシゴして、師匠S.O.と若手とで翌02:00近くまで話をしていた。本当に嬉しい夜だった。
 最後の案件で、最後のお役目を果たし、これで本当に一区切り。お客さんの笑顔や、地域の方から声をかけていただくこと、職場の仲間、師匠S.O.の存在、ありがたいことだ。そして、3年4ヶ月の僅かな期間ながら、少しでも自分が東北、福島、そして浜通りの復興に関わったことは、誇りだ。今は遠くから見守る側だが、この誇りを胸に、東北に向ける思いは以前と何も変わらない。
 今日1日は、本当に素晴らしい旅だった。

*1:写真の商品は正確には、酪農カフェオレシリーズの酪農ハイ・カフェオレ。

*2:詳細はid:M-I-5:20150218参照。