黒いところ

線香違い

 先月、祖父の弟(以下、「おじさん」とする)が亡くなった。既に直系ではないにしろ現家長の兄弟ということで盛大な葬儀が行われたのだが、密葬中の密葬のため、親族も一部しか参加できなかった。それもふまえて本家のうちからも数名で池袋のおじさんの家に行って、仏壇に花と線香でもあげにいくことになった。
 個人的な見解でもって今まで家や女性関係、扶養などいわゆる暗黙の部分について近年はそれほど書いたことがなかったが、今回の一族に関する部分に限っては特に歪んだものであると再実感したため書いておくことにする。
 若い頃に東京に出ていき、自分の知る範囲では土地貸しをやっていた(未だおじさんの正確な職は不明)のを記憶している。リタイアという言葉を知らなかった。教育に熱心で、息子は有名大学出の有名企業の部長にもなった。しかし、いつも実家を懐かしんでは帰郷してうちに来ていた。最後に会ったのは1月のこと。俺が今年就活することを親戚伝いに聞きつけ、おじさんの家に呼ばれたことからだった。すき焼きを数人前も食わされつつ、まあ何社か聞いたことある会社を挙げられるも、金融だの保険屋だのばかりで全部突っぱねたのが会った最後だった。そこからガンが発覚、おじさんは既に末期だった。そして見舞いに行こうという話が出たとたんの訃報。あまりにも突然だった。
 前述の通り葬儀には密葬の絡みもあって出られず、そして今日に至ることになる。葬儀にも出ていない親族をメインにひっそりと4家が集まる。仕出しを食いつつ、酒をいただく。改めて思わされたのは男尊女卑という言葉。80歳を過ぎた老婆であろうと、10代の男より立場は下である。自分としては今また独身ながら、そろそろ子供ではなく若者扱い、つまりは大人扱いされるようになったので、酒の注がれ具合がひどい。簡単に言えばオールドグラスになみなみと酒*1を注がれる。誰も突っ込まないのは仕様ですらある。そんな中で行われるのは遺産についての配分や、今後の一族についての話。特に印象的だった話題が2つあった。
 1つはおじさんのへそくりが出てきた話。何に使う目的で貯めていたのかわからないが、いくらか出てきたらしい。はした金ではあったが、それをおじさんから見て息子の嫁に当たる人がヘタな心配をしているらしい。表現が古くさいんだよと思った。簡単に言えば「"その金くれよ"と言われた」と言えばいいのに思う。株でも始めたかったのかい。ステレオタイプな遺産相続のモデルを見せてくれて大変ありがとうと思えた。
 もう1つはおじさんから見て直系の孫娘に当たる子供の話。詳しくは知らないが結婚適齢期に見える。14,5歳くらいだろうか。この会食というか悼む会というか、まぁこれに来ていたのだがこの子の扱いについて。半分「俺が呼ばれたのはそういうことか・・・」と思うも、知らぬ存ぜぬで通す。老人共はなんでこういうことを自分たちで決めたがるのか。1番乗り気なのがおじさんの嫁、つまりはその子供の祖母なんだからタチが悪い。その祖母から酒を勧められまくる。随分高い酒代だなと思いつつも、酔いに任せて見ないふりしておいた。どうせそんなふりしても無意味なんだがな。一族の死を補填しようとする魂胆とか、俺の就職先が決まったから囲い込みに入ろうとする魂胆が見え見えなんだよ。
 段々面倒になって来た頃、お開きとなった。なんとか耐えきった。帰りは車で秋葉原まで送ってもらう。街に降りたとき、周りからは相当怪しい人たちだと思われただろう。しかし、なんで秋葉原かと言えば一緒に来た家族が秋葉原見てみたいという楽観的な理由だったのだが。だが大雨に見舞われ、結局秋葉原についたその時点で帰宅することに。天災には勝てん。
 とりあえず実家に帰ってくる。夕飯にも酒を飲まされる。このところ毎週のように実家に帰らされている気がして、改めて一族の酒好き具合に驚きつつ、夕飯はまたしてもおじさんの思いでを懐かしむのだった。

*1:念のため言うが、酒と書いた場合は日本酒のことを指す